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「初心者にもできる長期投資で厳選銘柄を探そう!」第3回 1株あたり株主価値が増える株を探そう!【ROE 編】⑤
では、最後の問題です。ROEが高い会社、高い銘柄にはどんな共通点があるでしょうか?「通信系」、「景気循環」、「情報通信」、いいですね。他はどうですか?
「大企業」、「成長企業」、「利益率が高い会社」いいですね。そうです。業種の傾向もありますけれども、ちょっとここは財務分析っぽく、私も一応会計士ですし、ややこしめな話をしてみましょう。
ROEなんですけれども、先ほどお示ししたように、当期純利益÷自己資本で計算することができます。この自己資本と純資産はほぼニアリーなので、同じと置き換えて話をシンプル化します。
これを分解していきます。高校生のときに数学の授業でやったような話です。当期純利益、分子、これをひとまず売上高で割りましょう。
次にかけ算します。次、分子に売上高を持ってきます。分母に総資産を持ってきます。
またかけ算をします。分子に総資産を持ってきます。分母に自己資本を持ってきます。
これは全部かけ算なので、消していくと、結局分子の当期純利益と分母の自己資本が残るっていう、高校時代にこんなのをやりましたよね。こうやって1つの式を複数の項目に分解するっていうやつです。分解しました。
分解すると、まず1つ目、当期純利益÷売上高、これはなんですか?利益率ですね。
2つ目の項目、売上高÷総資産、これは何かと言うと、回転率などと言われるもので、要は少ない資産でたくさんの売上を上げたらすごいねという、そういう項目です。
最後、財務レバレッジ、総資産÷自己資本。これは少ない自己資本でいっぱい借入して、たくさんの資産を買ってビジネスをやってるということですね。その項目です。
この3つの項目に分解することができるんです。ここまではなんとなく分かったかなと思います。
この左の利益率、言い換えれば収益性が高い会社というのはどんな会社かと言いますと、他社と差別化できている会社です。
真ん中の回転率が高い会社というのはどういう会社かと言いますと、ビジネスモデルが優れてて、効率的に売上を上げることができる会社です。
最後に財務レバレッジが効いている会社は、安全性が逆に低いわけですけども、リスクをうまく取っている会社ということです。
では、質問です。ちょっと難しいかもしれませんが、ファナックは、この3つの項目のうち、どの項目が優れていると思いますか?
世界のファナックです。工作機械を制御する技術に長けたファナックです。
「差別化」。そうですね。安全性は、すみません、表現が悪いです。どちらかと言うと、危険性ですね。危険なビジネスをやっていればやっているほど、ROEは高くなります。
安全性というよりも危険性です。借入をたくさん行い、大きいビジネスやっているほうが、ROEは高くなるんでしたよね。そうなんです。収益性。差別化が優れているのは、ファナックなんです。
では、神戸物産はどうだと思いますか?どこが優れていると思いますか?
ファナックは収益性、差別化がすごいということでした。そうですね。神戸物産は危険性のところが優れています。危険性が優れてるっていっても、それはすごいことなんです。
F1のレースを思い浮かべてください。すごいスピードで走ってるけど、うまく車を制御してカーブを曲がっていくじゃないですか。そんな感じです。リスク、危険を冒しても、ちゃんと会社をこかさないでいけるということです。神戸物産はこのリスクの部分、あるいはビジネスモデル自体も実は優れてるんですね。
数字で確認しましょう。分解しました。上の行がファナック、下の行が神戸物産です。
ファナックは差別化の部分、利益率の部分が非常に高く、25.6%です。神戸物産はそこの部分は0.9%しかありません。それに対して、ビジネスモデル、効率性とか、安全性というか、危険性という部分では、もう圧倒的に神戸物産のほうが優れているわけです。
全然違うでしょう?だから、神戸物産とファナックは、ROEは一番最初のほうで見たように、ファナックは12%、神戸物産は14%であんまり変わらないです。なので、どちらも同じように12~14%というように見えるけど、その裏側は全然違うわけです。
ファナックはもう他社に類を見ない、非常に収益力の高い製品を持っています。利益率が高いです。だから、ROEが高くなっています。それに対して神戸物産は、商品は大したことないんですよ。商品は大したことない。そう言ったら怒られるけど、そんなに大きな差別化ではないんです。
でも、ビジネスモデルがすごいです。少ない資産でたくさんの売上高を上げる。これはフランチャイズをやっているからですね。財務レバレッジをめっちゃ効かせてるということです。だから、ROEが高くなる。財務レバレッジを効かせているのは、すごいことなんですよ。
例えばソフトバンクの孫さんだってそうですね。めっちゃ借入してるけど、それでビジネスをどんどん大きくしてますよね。だから、財務レバレッジを効かせても、それで会社を倒産させない範囲でたくさん借入をして、大きなビジネスをしていくっていうのは、これは経営者の能力なわけです。すごいことなんです。だから、ファナックと神戸物産は、それぞれいいところが違うということです。
ということで、見てきましたが、最後のポイントはちょっと難しかったです。ここは分からなくてもいいです。これが分からなくても長期投資はできます。
一応ROEを3つの要素に分解しました。ROEを分解すると、なぜROEが高いのか理解する助けになるということです。
(⑥へつづく)
2017.06.16
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