Q5.その株の株価は割安?! 一覧へもどる
先生!今回もわかりそうでわからない疑問もってきましたよ! |
なんでも聞いてください!今回はどのような質問ですか?! |
ありがとうございます!今回は、PBRが著しく低い企業の株価が割安なのかどうかを判断しかねているのでアドバイスをもらおうと思いました! |
なるほど。S社が注目しているこの企業A社(A社名はページの最後に記載)のPBRは、0.26。このPBRは、一般的に割安さを判断するための指標として使われ、「PBR<1 ならば割安」と言われることが多いです。 |
ここでも企業価値と株価の比較が大切なんですね。 |
これは、基本ですし覚えておいてください! |
まず、資産バリューを計算してみましょう。
資産バリュー = △7,211百万円 → ゼロ (会員サービス参照)となります。
資産バリューがゼロとなる理由は、ビジネスモデルにあります。
このA社のビジネスモデルの特徴は、直営多店舗展開です。直営多店舗展開というのは、自社で多数の店舗を展開していくビジネスモデルです。フランチャイズと全く逆になります。
直営多店舗展開のメリットは、品質管理を徹底できるという点です。デメリットは、莫大な資金がかかるという点です。秀英予備校の利益剰余金(過去からの利益の蓄積)が100億円であるのに対して、有形固定資産が127億円あることからも分かるように、どれだけお金を稼いでも、それが設備投資に消えて行ってしまっている様子が窺えます。実際、65億円もの借入金が残っています。
また、有形固定資産127億円に対して税引後営業利益が2億5千万円ですから、投下した有形固定資産に対する利益率は約2%しかありません。
このため、資産バリューがゼロになってしまっているのです。A社が戦略を転換しない限り、資産バリューはゼロのままでしょう。
資産バリューがゼロ・・・もう一つの観点も教えてください! |
もちろんです。 |
業界ライフサイクルについては、会員サービスで解説していますが、カンタンに言えば「あらゆる業界には成長期、成熟期、衰退期というライフサイクルがある」というものです。
ご想像の通り、学習塾業界は衰退期にあります。その背景には、少子化問題があります。少子化により潜在的な市場規模が縮小しているだけでなく、最近の傾向として少子化による受験競争の緩和により、学習塾にお金をかける度合いが減少しているようです。
収益バリューを計算するに当たり、サービス業の業界係数は@(会員サービスで)ですが、どうもこの@という数字をそのまま使うのはよくなさそうです。( 収益バリュー = 会員サービスで)
収益バリューの計算です。A社はサービス業の中でも学習塾業界に属します。人口減の著しい日本において、学習塾は衰退産業に属すると考えられます。
学習塾業界の業界係数(過去5年間のPERの平均値。詳しくは会員サービスで。)は、「@」です。
衰退産業ということで業界係数は「@」よりも小さくなっています。
ここで、A社の収益バリューと企業価値を計算してみましょう。
収益バリュー = 計算式は会員サービスで = 4,436百万円
これに安全係数@を掛けて、
割引後収益バリュー = 2,927 百万円
割引後企業価値 = 資産バリュー + 割引後収益バリュー = 2,927 百万円
1株当たり割引後企業価値 =436 円
となります。
この436円よりも株価が安ければ、十分に割安といえます。
これを執筆している9月18日のA社の株価は、リーマンブラザーズ破綻直後ということもあってか、395円です。割安な価格といって良いでしょう。
長くなりましたが、ビジネスモデルという定性的な観点、バリューという定量的な観点という2つの観点からの分析はいかがでしたか?
【入門】から【中級】までの幅広い知識を活用したので、少し難しかったかもしれません。
それにしても、株式投資って本当に奥が深く、おもしろいですね!
よーくわかりました!やっぱり、PBRだけで割安かどうかを判断するのでなく、企業の1株価値を計算することが重要だということが理解できました。帰ってe-learningします! |
今回は、難しかったと思いますが、しっかり復習しておいてください! |
A社=秀英予備校
予備校っていうワードでピンときた方がいたかも?!
ちなみにフランチャイズ経営を行っている塾は、明光ネットワークです。