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「初心者にもできる株式長期投資」第5回 投資対象として有望な業種・業界はどこか?②
ちなみに、基本的な概念の確認ですけれども、銘柄を選ぶときにボトムアップというアプローチ、個々の銘柄に着目するアプローチと、トップダウンというアプローチがあります。いい株の探し方ですね。今話している話はどちらか分かりますでしょうか?
「ディフェンシブで成長な業界ってどこかな?」、その中で例えば「農産物業界がどうも有望だな。農産物業界の中の企業を見てみよう。サカタのタネがある。ベルグアースっていう会社がある。タキイもある。」というように、このアプローチはトップダウンアプローチです。
イメージとしては鷹の目で高いところ、トップのほうから「儲かりそうな業界はどれだ?」と見て「農産物、いけそうだぞ」ということで農産物業界に着目して、その中の企業をさらに調べていくというのがトップダウンアプローチです。
逆に、例えば「毎日これを飲んでいるな。この飲み物、このコーヒーはどこのかな?サントリー。そういえば、いつもサントリーのコーヒーを飲んでいるな。ビールも飲んでいるな。サントリーってどうだろう」というように、個々の企業に注目していくのが、ボトムアップアプローチです。ですので今日はトップダウンアプローチですね。
ここで質問です。では、サカタのタネってどう思いますか?皆さん、そもそもサカタのタネはご存じでしょうか?
そうですね。種苗です。サカタのタネは農産物業界の中でも成長サイクルにある会社だと思いますか?あるいは、日本国内で成熟している会社だと思いますか?昔のサカタのタネは、国内市場だけでした。国内市場で頑張っていた企業です。
でも、国内は成熟しています。ご想像の通り、国内の種苗業界は成熟しているわけです。ですので、国内でだけ頑張っていたら、サカタのタネは成熟している企業です。ですが、経営者が「このままじゃいかん。海外にも出ていこう」ということで、海外の農産物、種苗マーケット、種、苗のマーケットに攻め込むことにしました。
そうすると、後で見ますけれども、海外の種苗のマーケットというのは、明らかに成長しています。ですので、今までは成熟していた企業が、この経営者の「海外に攻めよう」という判断によって成長企業に変身するわけです。
皆さん、サカタのタネのように、変身した企業は他にどんな会社がありますでしょうか。
「ユニクロ」、「富士重工」、「キッコーマン」、「アサヒ」、「ヤクルト」、「オムロン」、「スバル」、「任天堂」、「キッコーマン」、「ソフトバンク」、そうですね。いいですね。
ここで、先ほど農産物業界という切り口で一応見ました。国内の農産物業界は成熟しています。でも、企業の経営者の方針によって、成熟、2番だったと思っていたのが1番に変身することができるんです。
ですので、トップダウンアプローチは杓子定規に数式できれいに分けられるものではありません。今までは農産物業界で成熟だと思っていた会社が、ふと気付けば知らない間に成長産業に参入していて、知らない間に成長企業になっていたということがあるわけです。
これを面白いと思っていただける方は、長期投資向きの方です。「そんなはっきりしないのは嫌いだ、全部数式で表してほしい」という方はおそらく短期投資や、テクニカルな投資がいいんでしょうね。ちなみに、サカタのタネは海外売上が53%です。
皆さまからいただいた質問の中で、「海外売上高が多くなると為替の影響が大きくなります。それについてはどう考えたらいいのですか」「リスクばかり高まって、投資対象として魅力が下がるんのではないでしょうか」というご意見があります。
これについての私の意見、考え方はこうです。為替の影響は確かにあります。海外売上が増えていけば、為替変動によって業績が変動するというリスクがあります。でも、そもそも国内にいれば、マーケットが確実にしぼんでいきますよね。座して死を待つ状態にあるわけです。
それに比べれば、海外に攻めていけば大きなマーケットがあるわけです。ですので、もちろん海外に出ていけば為替によって苦しむことはありますが、それは大きな上昇トレンドの中での波であって、そもそも国内の下降トレンドの中で為替の影響なく一直線に座して死を待つよりははるかにいいと考えています。
要は、長期的な影響という意味では、どういうマーケットに攻めていくかということのほうがはるかに大事だということです。その大事さに比べれば、為替変動というのは小さなことだということです。短期的には影響がありますが、経営者としても海外に工場をつくる、販売子会社をつくるということをしていけばいいわけです。対処として何もできないわけじゃない、というふうに思っています。
ここまでよろしいでしょうか?まだ33業種の中の1業種だけしか話をしていませんが、ここまでよろしいでしょうか?ありがとうございます。
では、3つ目の業界に行きます。建設業です。
建設業はさらに6つの業界に細分化しています。この中で今業績がいいのはゼネコンです。特にスーパーゼネコンがいいです。スーパーゼネコンはどのように分類しているかというと、成熟で景気循環と分類しています。
海外に進出していっていますが、海外での売上割合というのは、まだまだ経営に重要な影響を与えるほど大きくありません。ですので、例えばゼネコンは下の図で行くと、成熟の景気循環だから、長期投資の対象としては向かないと思います。
いくら過去最高益、バブル後に匹敵する、バブル後最高と言われても長期投資にはやはり向かないだろうなと思います。
ではエンジニアリング業界を見ていきましょう。
代表的な企業は日揮です。この企業は世界で戦っていますね。ただ、景気循環の影響を受けやすいので、成長で景気循環という銘柄です。この企業は、基本的にはおすすめはしないですが、長期投資するならば日の目を見ることもあるでしょうというカテゴリですね。日本の個人投資家には非常に人気があるカテゴリです。
成長で循環の銘柄に投資するときの注意点はなんでしょうか?これは過去に第3回目の講義でやりましたが、覚えていますでしょうか?
そうですね。循環の成長株は、私は投資対象としてはあると思っています。例えばトヨタ、ブリヂストン、それからちょっと渋いところで言うと、関西ペイントがあります。先ほどの日揮もそうです。千代田化工もそうでしょう。
投資の注意点は、過去最高益のときに売って過去最悪の業績のときに買うということです。(③へつづく)
2017.05.22
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