【基礎】DVD講座テキスト7-4に関して質問があったので、回答します。
テキストの内容を深く理解されている方からの質問でして、
他の受講生の方の参考になると思いますので紹介いたします(かなりハイレベルです)。
ここでは、自己株式の取得が株価を上昇させる効果があることを解説しています。
【テキストからの抜粋】
具体例
発行済株式総数100株、当期純利益100円。
このとき、1株当り利益は1円。
自己株式を10株取得した。
これによって、流通している株式数が100株から90株に減少する。
1株当り利益は、 100円 ÷ 90株 = 1.11円 になる。
自己株式の取得により、株主1人当りの取り分が増加した。
自己株式の取得は、株価を上昇させる効果がある。
【質問】
企業が自己株式取得を行っても、発行済株式数は減少しないため、一時的な需給の改善にはなるが、
長期的に見て株価を上昇させる効果はないのではないか?
【回答】
自己株式取得後、自己株式が消却されず市場で売却されれば、そうです。
ここから詳しく解説します。
企業が自己株式を取得した後、これをどのように取り扱うか、2つの方法があります。
1.自己株式を消却する・・・その株式を消滅させること。消却した自己株式を、その後売却することはできません。発行済株式数は減少します。
2.自己株式をしばらく保有し(いわゆる金庫株)、その後売却する・・・発行済株式数は減少しません。
それぞれについて見てみましょう。
「1.自己株式を消却する」は、発行済株式数が減少するため、1株当り利益が1.11円に増加し、その後も変わりません。
したがって、長期的に見ても株価を上昇させる効果があります。
これに対して、「2.自己株式をしばらく保有し、その後市場で売却する」は、発行済株式数は減少しません。
ここで注意しなければならないのは、発行済株式数は減少しなくても1株当り利益は増加するということです。
少し長くなってしまいますが、決算短信等で開示される1株当り利益の計算方法は「企業会計基準第2号 1株当たり当期純利益に関する会計基準(企業会計基準委員会)」で定められています。
これによると、
1株当り利益 = 普通株式に係る当期純利益 ÷ 普通株式の期中平均株式数
で求められます。
分母の「普通株式の期中平均株式数」とは、
普通株式の期中平均発行済株式数 - 普通株式の期中平均自己株式数
で計算されます。
つまり、自己株式が消却されずに手元に残されていても1株当り利益を計算する際には、まるで消却されたかのように考えて計算するということです。
したがって、自己株式は消却せずに手元に残してあっても1株当り利益は増加するのです。
以上のことから、「2.自己株式をしばらく保有し、その後市場で売却する」場合、自己株式を保有している間は1株当り利益は増加し、これを売却した時点で1株当り利益は元に戻るのです。
このため、短期的(自己株式を保有している間)には、株価を上昇させる効果があり、自己株式を売却した時点でその効果は失われます。
最後に、実際に取得された自己株式について見てみましょう。
東京証券取引所は、毎月、自己株式の処理状況に関する統計資料を公開しています。
このデータを元に平成19年1月から10月に行われた自己株式の処理を集計すると
金額ベースで66%の自己株式が消却されており、残りは売却ないしそれに相当する形で処理されています。
以上、少し難解になるので【基礎】DVD講座からは敢えて外していたのですが、質問がありましたので回答しました。